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税理士 長嶋佳明
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相続税対策に不動産管理会社を活用するべきなのか?
相続税対策に不動産管理会社を設立するメリット
相続税対策に不動産管理会社を設立するデメリット
相続税対策に不動産管理会を活用して所得分散する
相続税対策に不動産管理会社を設立する
相続税対策に不動産管理会社をどのように活用するのか?
相続税対策に設立した不動産管理会社をうまく運営する
相続税対策に注意すべき不動産管理会社の土地賃貸借
不動産管理会社が消費税の還付を受けるにはどうすればよいのか?

相続税対策に不動産管理会社をどのように活用するのか?

1 . 相続税対策に不動産管理会社をどのように活用すれば良いのか?

一般的に会社を設立する目的は事業を行うことで利益を出し、株主に利益を分配することにあります。
しかしながら、相続税対策に不動産管理会社を活用する目的は、不動産管理会社という「箱」をうまく活用して相続税や所得税を節税し、不動産オーナーの家族の財産が減るのを防ぐことにあります。
相続税対策に不動産管理会社をどのように活用するのかは、家族の方針や財産規模などにより異なります。
そのため、不動産管理会社を設立する前にどのような方向性で不動産管理会社を活用して行くのかを整理しておく必要があるでしょう。
相続税対策に不動産管理会社を活用する方向性として、一般的には次の2つが考えられます。
(1)不動産オーナーの不動産を不動産管理会社で管理していく
(2)不動産管理会社を所得分散するための「箱」として割り切る
(1)不動産オーナーの不動産を不動産管理会社で管理していく
相続税がかかる家族は、相続があるたびに相続税がかかるため、相続があるたびに家族の財産が減っていきます。
個人が財産を所有していると常に相続という問題を抱えることになりますが、不動産管理会社は人ではありませんのでそもそも相続が発生しません。
そこで、個人が所有する不動産を不動産管理会社に移すことで、相続を気にすることなく家族の財産を守っていくことができます。
不動産オーナーが不動産管理会社の株式を所有していれば、この株式が相続財産となりますので、相続税がかかります。
不動産管理会社の株式であれば、生前から計画的に相続税対策を行うことができますので、個人で不動産を直接所有しているよりもコストが抑えられ、その手続きも簡単になります。
一方で、家族の不動産を不動産管理会社に移す際には譲渡所得税がかかる可能性がありますので注意が必要です。
特に土地を会社に移す際には、売却価格の20%程度が譲渡所得税として課税されてしまう可能性があります。
不動産オーナーが所有している不動産を家族が設立した不動産管理会社に移すだけで多額の譲渡所得税が課税されるのは好ましいことではありませんので、この問題をどのようにクリアするのかが課題となります。
家族の不動産を不動産管理会社で管理していくという方針で不動産管理会社を活用する場合には、不動産管理会社は不動産オーナーが所有する不動産を買い取るための資金を準備しなければなりません。
不動産の買い取り資金を準備するには、不動産管理会社の利益のすべてを家族に役員報酬として支払うのではなく、不動産管理会社の会社内に資金留保をしておくことが必要です。
不動産管理会社で資金留保するということは、不動産会社に法人税が課税されることになりますが、家族の方針を実現するための必要経費と割り切ることも時には必要です。
(2)不動産管理会社を所得分散するための「箱」として割り切る
相続税は課税されるが手持ちの金融資産で相続税を払うことができる場合には、不動産管理会社は不動産を所有することを目的とするのではなく、不動産収入を分散させるための「箱」として使うという考え方もあります。
この場合、不動産管理会社の収入から必要経費を支払った後の利益をすべて家族に役員報酬を支払うことで、不動産収入を家族に分散させることができます。
この場合、不動産管理会社には利益が残りませんので、不動産管理会社に法人税は課税されません。
不動産収入を家族に分散させることを目的とする場合、できるだけ収益性が高い不動産を不動産管理会社に移したいところです。
建物を売却する場合は、譲渡所得税が課税されないことがほとんどですので、土地よりも建物を優先的に不動産管理会社に移していくことが理想的です。

2 . 不動産管理会社に不動産を所有させる場合の注意点

不動産オーナーの不動産収入を最も多く分散できるのは、不動産管理会社が不動産オーナーの不動産を所有する「不動産所有方式」となります。
不動産管理会社が不動産を所有するためには、土地や建物を不動産管理会社に移す作業が必要となります。
そこで、どのような点に注意して不動産管理会社に不動産を移せばよいのでしょうか。
(1)不動産管理会社には収益性の高い建物を所有させる
不動産管理会社が不動産を所有するためには、不動産オーナーが所有する土地・建物を不動産管理会社に移す作業が必要となりますが、次の2点の課題をクリアしなければなりません。
① 譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税などのコストがかかる
② 不動産の買取資金をどのように調達するのか
① 譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税などのコストがかかる
不動産オーナーが所有する不動産を不動産管理会社が買い取る場合には、譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税の負担が出てきますので注意が必要です。
・譲渡所得税
特に土地を不動産管理会社に移したときに譲渡所得税が課税される可能性があり、売却価格の20%程度と相当高額になることから、税負担の問題をクリアできるのかが課題となります。
・不動産取得税
不動産取得税は都道府県の税金で、不動産を取得したときに課税されます。
不動産取得税は「固定資産税評価額×4%」で計算されますが、取得した不動産が住宅用家屋や土地であるときは3%に軽減されています。(平成30年3月31日まで)
・登録免許税
不動産オーナーが所有する不動産を不動産管理会社が買い取る際に、不動産の名義を変更する「登記手続き」をする場合は登録免許税がかかります。
登録免許税は「固定資産税評価額×2%」で計算されますが、名義変更をする不動産が住宅用家屋や土地であるときは1.5%に軽減されています。(平成29年3月31日まで)
なお、登記手続きを司法書士に依頼するときは、別途司法書士への報酬が必要となります。
② 不動産の買取資金をどのように調達するのか
不動産管理会社が不動産を買い取るためには、不動産管理会社において不動産を買い取る資金を準備しなければなりません。
新たに設立された不動産管理会社ですので、通常は不動産を買い取れるような多額の資金を持っていません。
そこで、不動産の買取資金を調達するには次の2つが考えられます。
(a)銀行から借り入れる(アパートローン)
(b)不動産オーナーから借り入れる
(a)銀行から借り入れる(アパートローン)
不動産管理会社を設立する際の資本金は、不動産管理会社の税負担を軽くするために通常は1000万円未満に抑えることになります。
不動産管理会社は不動産を買い取れるほどの資金がありませんので、銀行からの借り入れも検討することになるでしょう。
ここで問題になるのは、設立されたばかりの不動産管理会社に銀行が融資をするのかということです。
個人向けにアパートローンがあるのと同じように法人向けにもアパートローンがありますので、銀行が融資を行うかどうかの判断は、賃貸不動産の収支の状況・築年数・担保の有無などがポイントになってきます。
銀行が最も重視をするのは、賃貸不動産の収支です。
バブル時代であれば、担保があれば不動産の収支が多少悪くとも融資をしていましたが、昨今では担保があれば融資を受けられるという時代ではなくなりました。
また、不動産管理会社が買い取る予定の不動産について、銀行ローンが完済していれば不動産管理会社がその不動産を買い取ることについて何ら問題ないでしょう。
しかしながら、銀行ローンが返済中であるときは注意が必要です。
・銀行ローンを完済している場合
例えば、不動産オーナー所有の中古マンション建物を不動産管理会社が買い取るケース。
この場合は、建物の時価相当の現金を不動産管理会社が持っていれば、建物の売買契約をして買い取り代金を不動産オーナーに渡せば、建物の所有権は不動産管理会社に移ります。
もし、不動産管理会社に建物買い取り資金がないときは、買い取り資金を銀行からローンすることになるでしょう。
・銀行ローンが返済中の場合
銀行ローンの残高が建物の時価よりも低い場合は、銀行は柔軟に対応してくれるはずです。
しかしながら、銀行ローンの残高が建物の時価よりも高い場合は非常に困難な対応になるでしょう。
銀行の立場としては、建物買い取り資金を不動産管理会社に融資することで、その買い取り代金で不動産オーナーの個人ローンを返済してもらうことを予定しています。
結果として、不動産管理会社を経由することで、個人のローンを不動産管理会社のローンに付け替えることができます。
ところが、銀行ローンの残高が建物の時価よりも高い場合は、個人ローンを完済することができません。
もしこの状態で銀行融資を実行させようとすると、銀行ローンの残高と建物の時価の差額に相当するローンを一括返済しなければならないでしょう。
この差額が大きければまとまった資金を準備しなければなりませんので、不動産管理会社の資金負担の問題が出てきます。
このような状況であれば「銀行ローンの残高=建物の時価」になるのを待って、不動産管理会社に建物を買い取らせたほうが良いかもしれません。
なお、銀行から不動産の買い取り資金の融資を受ける場合には、担保の提供と不動産管理会社の代表者が連帯保証人になることが求められます。
不動産管理会社が建物のみを買い取る場合には、その融資の対象となる建物、そして、融資の対象となる建物の底地(不動産オーナー所有)が担保の対象となります。
場合によっては、その他担保価値がある不動産に共同担保を要求されることもあるでしょう。
(b)不動産オーナーから借り入れる
不動産オーナーが不動産の買い取り資金を不動産管理会社に貸し付ける場合に、不動産管理会社は不動産オーナーに対して利息を支払う必要があるのかという問題が出てきます。
一般的な話として、会社経営者が自身の会社に運転資金を貸し付けることは当たり前に行われていることですが、会社は利息を支払うことはほとんどありません。
不動産管理会社の場合、借り入れる目的が運転資金ではなく不動産を買い取る資金となりますが、利息を支払わなくても問題はないのでしょうか。
借り入れる額が高額でなければ、利息を支払わなくても問題はないと考えられますが、いくら以上であれば高額な借入れになるのか?などの判断は必要でしょう。
(2)不動産管理会社にはどのような建物を所有させるのか
不動産管理会社にはどのような建物を所有させるのかを考える前に、賃貸不動産を事業として考えた場合に、不動産収支がどのように変化していくのかを確認しておく必要があるでしょう。
・不動産賃貸事業の開始時
建物は新しく、他の賃貸物件と比べて競争力が最も高い時期であり、減価償却費も多額にあります。
・不動産賃貸事業の開始から20年経過
建物の附属設備の償却が終わる時期となるため、建物部分の減価償却しかありませんので、税金負担が重くなってきます。
また、この時期から壁面や屋根の改修工事が必要となりますので、税金以外の支出も増えてくる時期です。
・不動産賃貸事業の開始から35年経過
建物の老朽化によって収益力が落ちてくる時期です。
家賃の引き下げや空室の増加により、収入が減ってしまうでしょう。
また、修繕費が増加し、税金負担が重くなってきますので、支出が増加する時期でもあります。
一方で、借入金の返済が進んで完済できているような場合は、不動産収支が大幅に改善されますので、不動産オーナーの手許に現金が多く残るようになります。
・不動産賃貸事業の開始から45年経過
建物の寿命を考える時期でしょう。
借入金も完済しており、不動産収支が大幅に改善されているため、不動産オーナーの手許に現金が多く残ります。
以上のような賃貸不動産の時間の経過による不動産収入の変化を踏まえて、不動産管理会社にはどのような建物を所有させるのかということについては、収益性の高い建物を所有させることがポイントとなります。
収益性が高い建物が築浅なのか、あるいは築年数が経過しているのかにより、不動産管理会社に所有させるのかどうかの判断が分かれてきます。
① 築浅の建物である場合
② 築年数が経過している建物
① 築浅の建物である場合
建物の建築年数が浅い場合は、相続税評価額の圧縮効果が大きいため、建物の相続税評価額は建物の時価よりも低くなることが一般的です。
そのため、相続税対策を目的として建物を所有する場合は、不動産オーナーが建物を所有するほうが有利になるでしょう。
また、建物の収入面から見ると、銀行から建物の建築資金を借り入れている場合には、借入金の返済の負担が大きいため、手元に不動産収入はほとんど残りません。
建物の建築年数が浅い建物を不動産管理会社に移転すると売買の金額も高額になり、不動産オーナーとしても時価で売買することになりますので、相続税評価額以上の現金が手許に入ってくることになります。
このようなことから、建築年数が浅い建物は不動産管理会社には移さず、不動産オーナーが所有したほうが有利になるでしょう。
② 築年数が経過している建物
築年数が経過している建物の相続税評価額は、建物の時価よりも高くなる傾向にあります。
そのため、相続税評価額よりも低い金額である時価で建物を不動産管理会社に移転することができるため、相続税の節税になります。
建物の収入面から見ると、借金が完済している建物は修繕費などの維持管理費用がかさんできますが、手許に現金が多く残るようになります。
このようなことから、築年数が経過している建物は不動産オーナーが所有するのではなく、不動産管理会社が所有したほうが有利になるでしょう。
また、建物を銀行から借り入れて建てている場合には、築年数が経過していると借入金の返済が終わっていることがあり、借入金の返済が終わっていると権利関係が複雑ではないため、売買をしやすいという利点があります。
(3)不動産管理会社へ建物をいくらで売却するのか
不動産オーナーが所有する不動産を不動産管理会社に売却する場合には、次の2つの課題をクリアしなければなりません。
① 売却金額をいくらにするのか
② 譲渡所得税の負担
① 売却金額をいくらにするのか
不動産の売却金額をいくらにするのかについて結論から申し上げると、時価を売却金額とするべきとなります。
時価とは、第三者間で成立する通常価格のことですが、この「時価」をどのように認識するのでしょうか。
例えば、不動産の価値を示すものとして、次のようなものがあります。
(a)固定資産税評価額
(b)帳簿価格
(c)不動産鑑定評価額
(a)固定資産税評価額
固定資産税評価額は、概ね次のような基準で設定されています。
・土地
公示価格の70%程度
・建物
建築価格の60%程度
固定資産税評価額は、土地であれば公示価格、建物であれば建築価格との大きな開きがありますので、これを時価とするのは少々無理があるように思います。
(b)帳簿価格
帳簿価格は、土地であれば購入価格、建物であれば取得価格から減価償却費を差し引いた残額となります。
土地の帳簿価格はあくまでも購入したときの購入価格であるため、これは現在の時価ではありません。
そのため、公示価格や不動産鑑定評価額を参考に時価を認識するべきでしょう。
建物の帳簿価格は、税法において定められている耐用年数により減価償却を行いますので、税法上の建物の現在の価値を表しているものと言えます。
この帳簿価格は税法上の現在の価値、つまり時価を示していることになるため、帳簿価格で売却すれば売却損益が発生しないことになります。
不動産オーナーと不動産管理会社との間で建物を売却するときは、帳簿価格を時価としても特段問題が起きることはないと考えます。
(c)不動産鑑定評価額
不動産鑑定評価額は不動産鑑定士が算出する鑑定額、つまり時価であると考えて差し支えないでしょう。
不動産鑑定士による鑑定評価額は、鑑定をしようとする不動産が所在する地域における取引価格、そしてその不動産の収益性を考慮して不動産の価格を算出します。
この不動産鑑定評価額を時価とするのが客観的であると思いますが、鑑定費用がかかってしまいますので、費用を負担してまで不動産管理会社に不動産を移すメリットがあるのかどうかの検討が必要でしょう。
通常、個人から会社に不動産を売却する場合、時価の2分の1以上の金額で売却したときは、所得税法59条(みなし譲渡所得)の規定は原則として適用されません。
ところが、不動産を売却する相手が不動産オーナーの家族が設立した不動産管理会社である場合には、不動産を売却した不動産オーナーの所得税が不当に減少するような結果になるときは、所得税法157条(同族会社等の行為又は計算の否認等)が適用され、売却をした不動産の時価で売却したものとして所得税を計算することとされています。
時価よりも低い価格で不動産を売却してしまいますと、税務上問題が出てくる可能性がありますので、時価の計算根拠を明確にしておくことが必要でしょう。
② 譲渡所得税の負担
不動産オーナーが不動産を売却した場合に譲渡益があるときは、譲渡所得税が課税されます。
先祖代々から所有している土地を売却する際には、多くの場合、売却金額の20%程度の譲渡所得税がかかります。
この譲渡所得税の負担が大きくなる可能性が高いため、土地を不動産管理会社に移す場合は注意が必要です。
一方で、建物を売却した場合には、通常譲渡所得税がかかることはほとんどありません。
時価で売却するため、時価と簿価が同じであることが多く、売却をしたとしても損も得も出ないことから、所得税はかかりません。
土地を売却する場合は、譲渡所得税の問題をどのようにクリアするのかが課題となります。
(4)不動産オーナーは消費税が課税される可能性がある
不動産オーナーが建物を売却したときは、将来的に消費税が課税される可能性があることに注意が必要です。
不動産オーナーが建物を売却すると、その売却金額は消費税の課税売上になります。
賃貸マンション・アパートを所有している不動産オーナーは、一般的には消費税の免税事業者であることが多いため、消費税は課税されていません。
ところが、建物を売却することで課税売上が1000万円を超えてしまうと、2年後から消費税の課税事業者となってしまいますので、消費税が課税されることに注意が必要です。
(5)売買契約書の作成
不動産オーナーが所有する不動産を不動産管理会社へ売却する際にも売買契約書を作成しておくことが望ましいでしょう。
税務署などの第三者にも不動産を売買したことを証明するために、売買契約書に収入印紙を貼るなど、第三者へ売却したときと同じ手続きをしておくことをお勧めします。
(6)税務署への書類提出
個人が所有する土地に会社が建物を所有している場合、通常は借地権が設定されることとなり、会社は地主である個人に権利金を支払うことになります。
また、会社が立ち退きをする場合には、地主が会社へ立ち退き料を支払うこととなります。
ところが、不動産管理会社は不動産オーナーの家族が設立することから、借地権が設定される際には権利金の支払いを行わない代わりに、立ち退きをする際に立ち退き料を支払わないことが一般的です。
このように、地主である不動産オーナーと建物を所有している不動産管理会社との間で、将来借地権を無償で返還することが約束されているときは「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することで、借地権の認定課税を避けることができます。
(7)譲渡所得税を少なくする方法
不動産オーナーの不動産収入を不動産管理会社に移転することを目的とするのであれば、不動産管理会社へ移転するのは建物が優先されます。
将来的には、不動産オーナー家族の財産を守るために不動産管理会社を活用することも考えられるため、土地を不動産管理会社に移す必要性が出てくるかもしれません。
このような場合には譲渡所得税の問題が出てきますが、例えば次のようなタイミングで移転すれば譲渡所得税を軽減することができます。
① 相続があったタイミングで、相続税の取得費加算を利用する
② 不動産の売却損が出たタイミングで、譲渡所得税の損益通算を行う
③ 不動産管理会社に土地を売却したタイミングで、事業用資産の買い替え特例を利用する
① 相続があったタイミングで、相続税の取得費加算を利用する
相続税は相続により財産を取得したときに課税されますが、この相続税は現金一括で支払うことが原則となっています。
相続した財産の中に相続税を払えるほどの預貯金があればいいのですが、相続税を払えない場合は相続した不動産を売却して、その売却代金で相続税を払うこともあります。
相続税を払うためとはいえ、不動産を売却することになりますので、譲渡所得税が課税される可能性があります。
相続税を払う目的で不動産を売却したのに、この売却代金に対しても譲渡所得税が課税されてしまいますと、相続税を払うことができなくなるかもしれません。
そこで、相続税が払えるように、譲渡所得税の負担を軽減できる措置として「相続税の取得費加算」という制度が設けられています。
相続税の取得費加算とは、相続があった日から3年10ヶ月以内に相続した財産を売却した場合に、支払うことが確定した相続税の一部を、譲渡所得税を計算する際に取得費に加算できるというものです。
相続した財産には相続税が課税されていますので、支払うことが確定した相続税を経費にできるため、譲渡所得税が少なくなるというようなイメージとなります。
相続した財産を売却したことで売却益が出たとしても、その売却益を少なくすることができますので、場合によっては譲渡所得税がかからないこともあります。
この相続税の取得費加算の制度を利用して、相続があった日から3年10ヶ月以内に不動産管理会社に土地を売却すれば、譲渡所得税の負担を大きく減らすことができます。
ただし、配偶者控除などを適用することで相続税が課税されなかった相続人が取得費加算の特例を適用しても、加算される相続税額はゼロであるため、譲渡所得税は軽減されないことに注意が必要です。
② 不動産の売却損が出たタイミングで、譲渡所得税の損益通算を行う
不動産を売却した場合に譲渡益があるときは譲渡所得税が課税されますが、この譲渡所得は給与などの所得とは別に課税される分離課税の方式が採られています。
不動産を売却すれば売却益が出ることもあれば、逆に売却損が出ることもあります。
このような売却損益は、譲渡所得の中で損益通算をすることができます。
他の不動産を売却して売却損が出たタイミングで不動産オーナー家族が守っていきたい土地を不動産管理会社に売却すれば、譲渡所得が出たとしても売却損と相殺することができます。
結果として、譲渡所得税を抑える効果が出てきます。
あるいは、含み損を抱える不動産がある場合には、あえて売却損を出して売却益と相殺してしまうということも考えられます。
③ 不動産管理会社に土地を売却したタイミングで、事業用資産の買い替え特例を利用する
個人が所有する事業用の不動産を売却し、その売却代金で他の事業用不動産を購入した場合に、一定の条件を満たすことで「買い替え特例」の制度が利用できます。
この買い替え特例は、不動産の売却益が出たとしても売却益の一部を将来に繰り延べることができます。
そのため、買い替え特例と相続税の取得費加算を組み合わせれば、譲渡所得税の負担を大きく減らすことができます。
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