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税理士 長嶋佳明
税理士 長嶋佳明
長嶋佳明税理士事務所
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相続税対策に不動産管理会社を活用するべきなのか?
相続税対策に不動産管理会社を設立するメリット
相続税対策に不動産管理会社を設立するデメリット
相続税対策に不動産管理会を活用して所得分散する
相続税対策に不動産管理会社を設立する
相続税対策に不動産管理会社をどのように活用するのか?
相続税対策に設立した不動産管理会社をうまく運営する
相続税対策に注意すべき不動産管理会社の土地賃貸借
不動産管理会社が消費税の還付を受けるにはどうすればよいのか?

相続税対策に不動産管理会社を設立する

相続税対策に不動産管理会社を活用することについて、デメリットよりもメリットの効果が大きいという判断がなされた場合には、不動産管理会社を設立することになります。
相続税対策に不動産管理会社を設立するには、次のようなことを決めておく必要があります。

1 . どのような種類の会社を設立するのか

不動産管理会社を設立にあたり、どのような種類の会社を設立するのかを決めなければなりません。
平成18年に新会社法が施行され、有限会社を設立することができなくなりました。
そのため、現在では株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類の会社を設立することができます。
相続税対策に不動産管理会社を設立する場合は、特別な事情がなければ株式会社を選択することが一般的です。
また、会社の設立費用が安価で会社の運営が自由である「合同会社」を選択する場合もあります。
株式会社
会社の出資者である株主は、株主総会で議決権を行使することで、会社の運営に参加することができます。
会社の経営については、株主総会で選任された取締役が行うことになります。
このように、会社の所有者(株主)と経営者(取締役)が別であることが株式会社の特徴となります。
相続税対策に不動産管理会社を設立する場合は、不動産オーナーのファミリーが会社を設立しますので「株主=取締役」であることがほとんどです。
合同会社
出資者は会社の業務を執行する権限があり、直接会社の経営に関与することができます。
定款において、出資者全員の同意があれば業務を執行する人を決めることもできます。
原則として出資者は、自身の出資持分を他人に譲渡するときは、他の出資者全員の承諾を受けなければなりません。

2 . 会社の名前をどうするのか

まずは、会社の名前を決めることになるでしょう。
株式会社であれば、会社の名前の中に必ず「株式会社」を入れなければなりません。
また、アルファベット・アラビア数字・カタカナを会社名に使用しても構いません。
旧商法では、類似商号の規制がありましたが、現在の会社法では規制がなくなりました。
同じ名前・同じ業種で既に登記されている会社があったとしても、会社を設立することそのものに問題はありません。
ただし、商標登録されている名称を会社名にするようなことになれば会社設立後に問題となる可能性がありますので、類似商号の確認はしたほうが良いでしょう。

3 . 本店所在地をどこにするのか

本店所在地には郵便物が届きますので、自宅とは別に本社事務所を借りる場合には、その借りた場所を本店にすることになるでしょう。
ところが、相続税対策のために設立する不動産管理会社は、あくまでも不動産オーナーが所有する不動産を所有・管理・運営するために設立します。
無駄な経費を省くために本社事務所は借りず、不動産オーナーの自宅を本店とすることが多くなるでしょう。

4 . 事業の目的を何にするのか

会社の事業目的は登記事項となっていますので、事業目的として定めていない事業を行うことはできません。
相続税対策のために設立する不動産管理会社は「不動産賃貸・管理」を事業として行うことがメインとなりますので、将来的に他に行いたい事業があるようでしたらあらかじめ登記しておくとよいでしょう。
もし後日に事業目的にない事業を行うときは、定款を変更し事業目的を追加すればよいのですが、事業目的の変更は登記事項の変更となるため、登記費用が発生することに注意が必要です。

5 . 資本金をいくらにするのか

不動産管理会社について設立時の資本金を決めます。一般的な事業を行う法人の場合は、資本金額が多ければ多いほど会社の信用につながりますが、相続税対策のために設立する不動産管理会社の場合は不動産オーナーが所有する不動産の所有・管理・運営することが目的であるため、対外的な信用を考慮する必要はありません。
旧商法では株式会社の最低資本金は1000万円と定められていましたが、会社法に移行したことで最低資本金の規制が撤廃され、現在では1円の資本金でも会社を設立することができるようになったことで、資本金はいくらでも構いません。
資本金額を税金面から考えてみますと、資本金額が大きいほど税金負担も大きくなる点に注意が必要です。
具体的には、次のような税金負担が大きくなります。
不動産管理会社設立時の登録免許税
不動産管理会社の設立時における登録免許税は、資本金の額が多ければ多いほど負担が大きくなります。
法人市民税の均等割り
不動産管理会社設立後において、法人市民税の均等割りは資本金の額が多ければ多いほど負担が大きくなります。
消費税の納税義務
不動産管理会社の設立時の資本金が1000万円以上であれば、設立時から2年間は消費税を納める義務があります。
事業税において外形標準課税が適用される
資本金が1億円を超えてきますと、事業税において外形標準課税方式となり、不動産管理会社が赤字だったとしても事業税が課税されてしまうことになります。
このようなことから、税金負担を抑えることを目的とするならば資本金は1000万円未満が望ましいということになります。

6 . 株主を誰にするのか

不動産管理会社を設立する目的は、不動産オーナーが所有する優良な不動産を不動産管理会社に所有させることで、不動産オーナーに集中する不動産収入を分散させることによる所得税の節税。
さらに、不動産オーナーについて相続税対策を行っていくためであることから、不動産管理会社は財務内容が良くなる傾向にあります。
株主を誰にするかについては、不動産オーナーの後継者が決まっている場合と決まっていない場合とで考慮すべき点は次のように異なります。
後継者が決まっている場合
不動産オーナーが出資をすると、不動産オーナーは不動産管理会社の株式を所有することになり、将来的にはこの株式が相続財産となります。
不動産管理会社の株価は不動産管理会社の業績・財務内容により変動し、不動産管理会社の業績・財務内容が良好であればあるほど株価は上昇していきます。
このようなことから、不動産オーナーや不動産オーナーの配偶者が不動産管理会社の株主になるのは避け、相続の発生が遠い将来である子供や孫が不動産管理会社の株主になることが望ましいでしょう。
ここで、未成年の子供や孫が不動産管理会社の株主になれるのか?という問題があります。
不動産管理会社の株主になることについて法律上年齢制限はありませんので、未成年の子供や孫であっても親の同意があれば問題ありません。
未成年の子供や孫を不動産管理会社の株主にする場合に、一旦祖父母や父母が株主となり、すぐに株式を子供や孫に贈与するということも考えられます。
この場合において、不動産管理会社の定款に株式の譲渡制限の定めがあるときは、株主総会の決議が必要になることに注意が必要です。
後継者が決まっていない場合
もし、将来的な不動産オーナーの後継者がまだ決まっていないときは、不動産オーナーあるいは配偶者が不動産管理会社の株主となり、後継者が決まった段階で売買あるいは贈与により株式を後継者に渡していくことが考えられます。
不動産管理会社が不動産を取得してから3年間は「株式の評価額=不動産の取得価額」となることが多いですが、3年経過後は株式の評価額が下がりますので、売買や贈与をしやすくなります。
後継者以外に株式を所有させない
不動産管理会社の株式は、不動産オーナー本人・不動産オーナーの配偶者・不動産オーナーの後継者以外の人には所有させるべきではありません。
不動産管理会社について発言権を持つのは株式を所有している人です。
後継者以外の人が株式を所有していると、後継者の思うように不動産管理会社の運営ができなくなる可能性があります。
後継者とそれ以外の人の人間関係が良好な間は問題とはなりません。
しかしながら、不動産管理会社の株式を所有している人に相続があれば、その子供・孫などが所有することになります。
いずれは、いとこ同士で不動産管理会社の株式を持ち合うことになり、それは不動産を共有しているのと同じ状況となります。
不動産を共有しているのと同じになりますので、不動産管理会社の後継者が自身の判断で会社経営をすることができなくなる可能性が出てきます。
そこで、どの不動産を誰に継がせるのか、不動産を誰がどのように管理していくのかなど、ファミリーとしての方針をある程度決めておくことが必要でしょう。
例えば、不動産が複数あり、子供が複数名である場合には、子供それぞれが不動産管理会社を設立して株主となり、各人それぞれが意思決定きるように配慮することも一つの方法です。

7 . 役員を誰にするのか

不動産管理会社を設立するにあたり、役員を決めなければなりません。
不動産管理会社を設立する目的として、不動産オーナーの収入を家族に分散することによる所得税の節税。
これに伴って、不動産オーナーの家族に現金を積み上げることで相続税を払うための現金を確保することができることが挙げられます。
この目的を達成するためには、不動産オーナーが役員になり役員報酬を受け取るのは好ましくないでしょう。
その理由は、役員報酬を受け取ることで不動産オーナーの所得が増えてしまいますので、所得税の節税効果が薄まります。
さらに、役員報酬を受け取ることで不動産オーナーの現金が積み上がります。その結果として相続財産が増加し、相続税が増えることにつながります。
相続税を払うための現金を確保することを考えますと、子供が役員となり役員報酬を受け取ることが望ましいです。
不動産オーナーや不動産オーナーの配偶者が役員報酬を受け取ることで、相続税を払うための現金を確保することができますが、不動産オーナーや不動産オーナーの配偶者の現金が増えることになりますので、不動産オーナーや不動産オーナーの配偶者の相続税が増えてしまうことになります。
相続税が課税された後の現金で相続税を払うことは資金効率が良いとは言えません。
不動産管理会社の役員に未成年の子供・孫を就任させたいと希望される方もおられるでしょう。
役員に就任する際の年齢制限は法律上ありませんが、不動産管理会社の運営について重要な意思決定を行うのが役員の仕事であることから、法的に意思決定能力がないとされる未成年が役員になることは実務上問題があると考えられます。

8 . 営業年度をいつにするのか

個人の所得税は、毎年1月1日から12月31日までの間の所得を計算し、これを翌年3月15日までに確定申告することになっています。
一方で、法人の場合は営業年度ごとに所得を計算することになっており、決算月を自由に決めることができます。
一般的な法人の決算は3月とすることが多いですが、不動産オーナーの家族が設立する不動産管理会社においては決算を3月にする必要性はありません。
個人の所得税と同じく12月で決算をしても構いませんし、家族が忙しい時期を避けて決算月を決めるというのも良いでしょう。
参考までに、不動産管理会社を設立する目的は、相続税対策と所得税対策にあります。
不動産オーナーの所有する不動産を不動産管理会社が所有・管理・運営し、不動産管理会社が所有する不動産の収支計算を行うことが必要となり、この収支計算を行うのが決算です。
個人所有の不動産について収支計算を行うのが確定申告であることを考えると、不動産管理会社の決算を12月以外に設定すれば、不動産オーナーの財産の状況・収支の状況を年に2回確認することができますので、有意義なことだと思います。

9 . 参考:現物出資

不動産管理会社への出資は金銭によることが一般的ですが、物による出資(現物出資)も認められています。
不動産管理会社の場合は、不動産オーナーが所有する不動産を現物出資することが考えられますが、金銭出資と比べると法人の設立手続きに手間がかかる点に注意が必要です。
会社法では現物出資をする場合において、その出資は現物出資される資産の時価を超えてはならないとされています。
そのため、現物出資をする資産の時価を明らかにする必要があり、現物出資される資産の時価について裁判所の検査を受ける必要があります。
ただし、次のような条件を満たしたときは、裁判所の検査は不要とされています。
現物出資される資産の時価が500万円以下であること
現物出資される資産について、弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の証明を受けること
現物出資される資産が不動産であるときは、上記の証明に加えて不動産鑑定士の鑑定を受けること
現物出資をするメリット・デメリットとして、次のようなことが挙げられます。
メリット
所有する不動産を出資するため、手許の金銭を使う必要がありません。また、金銭による出資をしても何ら課税されることはありません。
デメリット
現物出資をした不動産オーナーについて、現物出資をした不動産は取得した株式の時価により不動産管理会社に売却したものと取り扱われます。
特に土地を現物出資する場合は含み益が実現してしまうことになるため、多額の譲渡所得税が課税される可能性があります。
また、現物出資をするのが建物であるときは、不動産オーナーが消費税の課税事業者になる可能性がある点にも注意が必要です。
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